ユユユユユ

webエンジニアです

映画

『アラビアのロレンス』

新文芸坐で『アラビアのロレンス』を観た。 馬の群れが荒野を埋めるさまを見下ろす画面がいい。近代の騎兵隊というほどに秩序を強制されていない騎馬の軍団が、荒野をまっすぐに駆けてアカバ港に突撃する。何百もの馬がまっすぐに疾走するさまは、爽やかであ…

『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

マーティン・スコセッシの新作を新宿で観た。 ロサンゼルスで、大型のビルボード広告をみたのだった。路線バスの車体にも広告が出ていたとおもう。ディカプリオとデ・ニーロの存在感が強調されていた。映画であるかドラマであるかもたいして知らずに通りすぎ…

『はだかのゆめ』

早稲田松竹のレイトショーで、『はだかのゆめ』を観た。 孤独な映画だとおもった。家族にとってのつながりと疎外が、いち家族の個性的なモードを超えて普遍性をもつにいたる瞬間は、なかったようにおもう。 ないものを語ってもきりがないことは承知のうえで…

『ゴダールの決別』

早稲田松竹でゴダールの二本立てをみた。二作目は『ゴダールの決別』。 きれいな映画だとおもった。晦渋な台詞回しで満たされているが、全体として叙情的なトーンがある。湖のほとりに舞台をとって、水とひとの関係する描写がおおくあったことが、ロマンチッ…

『ゴダールの探偵』

早稲田松竹でゴダールの二本立てをみた。一本目は『ゴダールの探偵』。 いまいちリズムが合わずにすこし居眠りをしてしまった。烈しい日差しの下をあるいて疲弊していたのかもしれない。 ビリヤードの玉を手づかみで投げるシーンと、机の上に積み上げられた…

『ター』

新宿シネマカリテで『ター』を観た。 ベルリン・フィルの指揮者を取り上げて、ケイト・ブランシェットが秀でた演技をしている映画があるらしい、ということは公開前から聞き知っていたものの、日本公開がはじまったことに気づいたときにはもう上映が縮小され…

『クリード 過去の逆襲』

クリードの第三作を新宿バルト9で観た。 上映がはじまってまだ2週間くらいとおもうのに、各館1日に1回だけの上映、しかもほとんどがレイトショーという状況だった。このままではもうすぐ公開自体が終わってしまうのではないかとあわてた。大好きなシリーズで…

『フランシス・ハ』

ノア・バームバック監督の『フランシス・ハ』を観た。 社会にうまく馴染めない、というほどに悲壮感のあるわけではないけれど、空回りをしてはどこかさみしげなフランシス、27歳を描く。 惨めたらしく過ごしても不思議でないはずの人生が、口から生まれてき…

『ブルー・バイユー』

国籍システムの不備が悪意を持って運用されているという主題設定と問題提起に優れたものがある。 養子として合衆国にやってきて、そこで長く暮らしてきた人間が、手続きの不備をもって「見知らぬ母国」に送り返されるという理不尽さは現存する。人種マイノリ…

『スカイウォーカーの夜明け』

スター・ウォーズの第九作をみた。 ふたたびはじまってしまった物語になんとか決着をつけるために長い因縁を総動員して、それでどうにかこうにか話が終わることになる。観客としても、なんとか付き合いきれたという安堵を持っている。 レイの葛藤の根源は彼…

『最後のジェダイ』

スター・ウォーズの第八作をみた。 いくぶん大味なところと、シリーズのエッセンスを凝縮した部分が混在している。非常に出来が悪い部分がいくつもあったように記憶するいっぽうで、忘れがたい達成として印象を残した部分もおおくある。 優れていた部分。ル…

『フォースの覚醒』

スター・ウォーズの第七作をみた。 『ジェダイの帰還』の後日譚を描いて、滅んだはずの帝国と反乱軍(反乱とはなにか)の抗争が続いているということ。「前より強力なデス・スター」という三番煎じのアイデア。老人たちのいくぶん辛気臭いダイアローグ。そう…

『ゴールデン・エイティーズ』

ヒューマントラストシネマ渋谷でやっていた、シャンタル・アケルマン映画祭に行って、 1986年のミュージカル映画を観た。 カラフルで実用的な衣装を着た若い(白人の)女性たちが、美容師の仕事道具をぞんぶんに使いながら歌いまくる予告編を観た。底抜けに…

『シスの復讐』

スター・ウォーズの第六作を観た。 避けられない結末に向けて次々と悲劇が起こるさまが、古典の趣をたたえていた。これをシリーズ最良の作品とおいてぼくには異論がない。はじめからおわりまですこしも目を離さずに観て、不満を感じさせる部分もなかった。 …

『クローンの攻撃』

スター・ウォーズの第五作をみた。監督は引き続きジョージ・ルーカス。 これはあまり好みでなかった。終始沈鬱な雰囲気を発しているのは、アナキンに葛藤があるせいだが、彼は善と悪のあいだで揺れるというよりも、いつも悪のほうに振れていてかろうじて周囲…

『ファントム・メナス』

スター・ウォーズの第四作をみた。ジョージ・ルーカスが第一作以来に監督を執っている。 小学生のころに劇場公開された。映画館に連れてもらいはしなかったけれど、テレビ放送を録画したものを繰り返し観た記憶はある。きっと次作の公開時に放送されたのだと…

『ハン・ソロ』

スター・ウォーズのスピンオフ映画を観た。監督はロン・ハワード。 ブロックバスターのノリに波長があってたのしく鑑賞した。あまり期待せずに観始めたのは『ローグ・ワン』の後味もあってのことだったけれど、こちらは打って変わって最後までスクリーンにひ…

『ローグ・ワン』

スター・ウォーズのスピンオフ映画を観た。『新たなる希望』の前日譚にあたる。 冒頭に帝国幹部が訪れるというのであわてるある科学者の家族の描写がおかれる。エゴイズムを隠しきれない父、意味もなく死に急ぐ母、押し黙る女児。駆け足気味にクリシェを乱発…

『スター・ウォーズ ジェダイの帰還』

スター・ウォーズの第三作を観た。監督は再交代してリチャード・マーカンド。ジョージ・ルーカスが脚本にクレジットされているのは第一作以来になる。 前作までどこか頼りなさが残っていたルーク・スカイウォーカーは、冒頭から英雄の風格を身につけている。…

『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』

スター・ウォーズの第二作を観た。アーヴィン・カーシュナーが監督をしていて、ジョージ・ルーカスは製作にまわっている。 ルーク・スカイウォーカーは相変わらず英雄然としていない。むしろたいした負け犬で、しかもオビ=ワンとヨーダの忠告に逆らって負け…

『スター・ウォーズ 新たなる希望』

ジョージ・ルーカスによる SF サーガの第一作をみた。 子供の頃にテレビ放送を録画して繰り返し観ていたのは『ジェダイの帰還』とたまに『帝国の逆襲』だった。『新たなる希望』は案外みたことがなかったかもしれない。筋書きをよく知っているつもりでいて、…

『フェイブルマンズ』

スティーブン・スピルバーグの新作を劇場に観に行った。脚本にトニー・クシュナーが参加している作品を観たのははじめてになる。 ある映画好きの少年が青年に成長するまでを描いている。これは監督による自伝にあたると宣伝されているのだけれど、観てみたと…

『隠し砦の三悪人』

黒澤明の『隠し砦の三悪人』を観た。1950年代の黒澤作品はこれが最後で、1960年の『悪い奴ほどよく眠る』の前作になる。 これは『スター・ウォーズ』を観る前に、見比べてたのしむことができるよう選んだ。はじめての鑑賞ではないけれど、おもしろく観た。キ…

『スターシップ・トゥルーパーズ』

ポール・バーホーベンの SF 娯楽映画をみた。 ファシスト政治が巨大な虫の形態をもった地球外生命体を生存圏確保のために駆逐しようとする。市民権は軍役と不可分になって、民主主義は滅んでいる。そういう世界のなかに、アメリカ合衆国のハイスクール文化と…

『白痴』

黒澤明によるドストエフスキーの映画化作品を観た。舞台をロシアから札幌に移して、ふたりの男とふたりの女の複雑な関係を提示している。 たくましい男性像とかよわい男性像の対比がいっぽうにあって、他方で女たちは気が強くなよなよしていない。しかし傲慢…

『ビリー・ホリデイ物語』

日曜日の午前中に、東銀座の東劇をはじめておとずれて、ビリー・ホリデイの最晩年のステージを舞台化した作品を観た。オードラ・マクドナルドが歴史的な演技によって称賛を浴びたという広告が、映画館の古い建物のビルボードに堂々と掲示されていて、おもわ…

『ベネデッタ』

ポール・バーホーベンの新作を新宿武蔵野館に観に行った。 秘蹟が事実であるか虚言かで揺れるドラマであるが、超越的な奇蹟は存在するはずがないという立場から眺めるに脆弱さもある。この修道女は実在したと冒頭と末尾でしつこく言及するのはいくぶん蛇足で…

『M★A★S★H』

奇異な題名は高校生のころから知っていたけれど、観る機会がないままになっていた独特な映画『M★A★S★H』をみた。 おおきな筋がある代わりに舞台のお膳立てだけがあって、そのうえで即興的に大小の逸話が書かれていく。その構造に気づくまでは、いまいちとら…

『カッコーの巣の上で』

人間の自由を疑ってしまいかねない気分のときにうってつけの映画を観た。 怠惰で粗暴であることは悪であるのか? 手に入れたいものを求めることは傲慢であるのか? 判決をくだして断罪しようとする者もまた、不完全な人間であるというのに。 刑務作業はした…

『ペルシャン・レッスン 戦場の教室』

Bunkamura ル・シネマに強制収容所と偽語学を題材にした映画をみにいった。 焦点の定まらないストーリーテリングだった。主人公のユダヤ人の葛藤には踏み込まないいっぽうで、収容所につめかけるナチスに対しては、かれらの小市民的な悩みに不適切によりそう…