ユユユユユ

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『ファントム・メナス』

スター・ウォーズの第四作をみた。ジョージ・ルーカスが第一作以来に監督を執っている。

小学生のころに劇場公開された。映画館に連れてもらいはしなかったけれど、テレビ放送を録画したものを繰り返し観た記憶はある。きっと次作の公開時に放送されたのだとおもう。ウィキペディアアーカイブされた放送記録が、これを観た記憶に符合する。

冒頭にクワイ=ガンとオビ=ワンのコンビがライトセイバーで大暴れするシーンがあって、一気にボルテージが高まる。終盤のダース・モールとの戦いもあわせて、殺陣のクオリティはいちじるしく高い。時代と技術の制約はあるにせよ、ルーク対ベイダーの戦闘をはるかに上回っていた。ライトセイバー同士の戦いに見応えがあるのは当然として、レーザー銃を跳ね返して敵にお見舞いする技術が確実であることも、卓越したジェダイの凄みとしてよく描かれている。

アナキンのポッドレースも格好いい。まだ声変わりもしていない少年が何年もかけて手作りしたマシンで出場するという設定もいいし、レース中に数多くおとずれるトラブルに順応するのみならず的確にコントロールしてみせるパイロットの技術もいい。なにより、不正と暴力が野放しになった競争にあって、みずからの腕ひとつで正々堂々と勝ち抜くさまがいい。いっさい言葉をつかわずに、映像だけでレースのすべてを描いているところもいい。

人気のある作品の前日譚を描いて、かなり成功した部類にはいる作品だと感じた。おおきな主題に拘泥せずに、のびのびと風呂敷を広げていることがスケールを大きくしているのだともおもう。たとえば『ハン・ソロ』はハンの過去を描いておもしろかったけれど、『ファントム・メナス』はかつての善良なアナキンのみならず、オビ=ワンの修行時代もあつかう。さらにはまだ絶滅していないジェダイのクランもあらわれるし、帝国がやってくる前の共和国の統治システムの機能不全も語られる。そして最後には悲劇がおとずれることがわかっているのに、希望を信じさせるようなつくりになってもいる。実におおくのことが興味深く語られて、表面的にみえる以上に複雑な作品であるとおもう。

「フォースのご加護を」という台詞をジェダイ・マスターが使うことは、過剰なファンサービスにみえた。そもそもは『新たなる希望』でフォースを信じなかったハン・ソロが作中に一度だけ発した言葉で、それは激励とも皮肉ともとれるやりかたでとらえられていた。そのことをさしおいて、ジェダイマスターにこれを話させてしまうのは、いくぶん空回りしているようにみえてしまう。

もっとも、これは『ローグ・ワン』でなぜかただの反乱軍の合言葉みたいになっていることに強烈な違和感を持ったことを引きずっているところもある。もし『ローグ・ワン』を先に観ていなければ、フレーズの過敏症にもならずにもっと素直に聞き入れることができたのかもしれない。