ユユユユユ

webエンジニアです

本棚

大崎清夏さんの『目をあけてごらん、離陸するから』

詩人の大崎清夏さんの新刊をジュンク堂の池袋店でみつけた。あとからみると、その日がちょうど発行日だった。万年筆のサインと「よい飛行を」というメッセージがはいってある。 文庫本よりもすこし縦長の形態をしていて、表紙を脱がすと水彩画のしたにローマ…

『東大連続講義 歴史学の思考法』を読んだ

異なる時代と地域をそれぞれ専門にする12人の歴史家の、歴史学へのイントロダクション講義を束ねた本。これを読んだ。 「思考法」とひとつの言葉で抽象化するにも多彩なもののみかたが提示されて、とうぜんこの一冊によって歴史学のすべてを飲み下すことはで…

『ドン・キホーテ』の抄訳を読んだ

セルバンテスのドン・キホーテを、岩波少年文庫の牛島信明訳による抄訳で読んだ。 風車に突撃する偽騎士の話だということが教養としてひろく行き渡っているのは言うまでもない。しかしそれにとどめておくにはあまりにもったいない。この歳まで読まずにきたこ…

太宰治の『右大臣実朝』を読んだ

鎌倉殿ブームにあやかって買ったままになっていた、岩波文庫から新しく出た太宰治の『右大臣実朝』を読んだ。 太宰といえば天衣無縫の私小説作家という先入観があったのだけれど、それはまさしく先入観だった。『右大臣実朝』は、吾妻鏡からの引用、実朝の歌…

Elixir in Action, 2nd Ed

Saša Jurić の Elixir in Action, 2nd Ed を読んだ。 https://www.manning.com/books/elixir-in-action-second-edition この本は前々からいつか読んでみようと思いながら、いやいまはもっと他にやりたいことがあるから止めておこう、と躊躇していた。そして…

小野絵里華『エリカについて』

新宿紀伊國屋書店をふらっとおとずれたら、一階と二階のフロアが大きく改装されて公開されていた。そういえばしばらくのあいだ二階の文芸コーナーがアクセス不能になっていて、眺めたい棚がどこにいってしまったのかわからなくなっていた。昔ほどにしょっち…

Light in August by William Faulkner

肌の白い男。彼が容疑を受ける殺人、放火、逃走。生まれたときから黒人の血が流れていると疑われて、自分が白いか黒いかも、なんのために生まれてどこに向かっているのかもわからずに、数少ない知己とのすれ違いから破滅のほうに押し出されていく。 身重の若…

The Sound and the Fury by William Faulkner

いちど通読したとおもわれる痕跡が残っていた。難しい単語にマーカーで下線が引かれているのである。 学生のころに購入して、夏休みかなにかの折に第一部を読んだのは覚えている。そこで挫折した記憶があった。コロナに罹って寝込んでいるほかなにもすること…

Mrs. Dalloway by Virginia Woolf

紀伊国屋の新宿南店にてペンギン・クラシックス版を買った。おもしろく読んだ。ウルフを読むのははじめて。詩的なレトリックが頻出する文章を原書で読むことができるのは幸運であった。 たぶん和訳で読んでいたら途中で飽きてしまっていたんじゃないかとおも…

川端康成『古都』

川端康成が読みたいというよりは、京都の話を日本語で読みたいという気分があった。『古都』という作品があると聞き知って、それが新潮文庫から新装版で出始めているということも気に留めていた。その新しい版が区立図書館にあるのを偶然にみつけて借りてき…

Modernism: A very short introduction

芸術思潮としてのモダニズムというのにふと新しく興味がわいて、新宿南口の紀伊国屋の、洋書のフロアを久しぶりに訪れてこの本を見繕った。大学でロマン主義の講義をとったときに、これと同じシリーズの本をテキストに使って、英語のレポートはこういう文体…

ガルシア=マルケス『予告された殺人の記録』

名誉が重んじられていた時代の小さな共同体で、「おれはあいつを殺す」というぐあいに、殺人が予告される。あるものはそれを酔っ払いの大言壮語とおもい、あるものは本気でそれを防ごうと奔走する。それを止めるチャンスは無数にあったはずながら、ボタンの…

温又柔『魯肉飯のさえずり』

新しい小説を読むのはずいぶん久しぶりになる。読みだした最初の10ページほどはなかなかこちらのエンジンがかからずにいた。若い主婦がキッチンに立って独白するという、うまく自分にひきつけてもぐりこめない舞台から話がはじまるので、たしょうの戸惑いは…

坂口恭平の『よみぐすり』

ツイッターで発された「いい言葉」の抜粋を相田みつをの名言集よろしくパッケージしたような本、という印象が最初にあった。元気の出ることは書いてありそうだけど、1ページに140文字くらいという濃度の本で、しかも同じものをネットで無料で読めるんでしょ…

丸山圭三郎『ソシュールを読む』

1-8章では『一般言語学講義』の概要を解説する講義が語られて、9-10章で丸山先生のソシュールに依拠した文化論が語られる。 https://www.amazon.co.jp/dp/4062921200 チョムスキーは知っているけど、ソシュールは大学の講義で聞き知っているくらいで、ちゃん…

『言語が消滅する前に』

でも、文法には説明の気持ちよさがあるんだよ。特に関係がないと思われていた複数の事柄とか、例外に思えていたものが統一的に説明される気持ちよさ。1 数式を美しいというのと同じように、文法は美しい。ごく少ない文法規則、例えば英語であればたかだた5つ…

手を動かして学ぶ 線形代数

マセマの線形代数を終わらせたので、次にやろうとおもっていた参考書を準備した。裳華房の『手を動かして学ぶ 線形代数』である。 8つからなる章立てはいずれも既習の範囲になる。行列の定義からはじまり、対称行列の対角化にいたる。各章は3つの小見出しに…

マセマの線形代数キャンパス

同じタイトルの記事を一ヶ月前に書いた。これをきちんと終わらせることができた。 https://jnsato.hateblo.jp/entry/2022/02/07/230000 二次と三次のベクトルを図示しながら自然な形で概念を示してくれる。より高い次元への一般化は、それが可能であることだ…

孤愁

漱石の『硝子戸の中』を読んだ。ひとりで物思いに耽る、そういう意味の孤愁という単語は、石原千秋の解説文に教えられた。新潮文庫版である。 晩年の漱石が、広くはないが狭くもない部屋の中で、豊かではないが貧しくもない生活をしている。若い日の記憶のな…

マセマの線形代数キャンパス

A programming language to heal the planet together: Julia | Alan Edelman | TEDxMIT https://www.youtube.com/watch?v=qGW0GT1rCvs というビデオを週末にみて、めっちゃいいバイブス! と気持ちを奮わされて、そのまま Julia をインストールして、すこし…

SICP が届いた

SICP が届いた。 amazon のレビューを見ていても、みんなが口を揃えて「この本は異常なほど難しい」「しかし読む価値は確かにあった」と、他に類をみない推薦文が並んでいる。 teachyourselfcs.com で言及されていた、 UC Berkeley CS 61A という講義のウェ…

The Little Schemer を読了

The Little Schemer を読了した。正月休みに読み始めていた。 ひとくちに再帰といっても、よくわかっていないところが多い。うまく制御できずに無限ループを引き込んでしまうのが怖い。そういう畏怖に似た感情をもつ人は少なくないのではないか。かくいう僕…

The Little Schemer を読み始めた

Cがコンピュータがどう動作するかのモデル化に最も適した言語とすると、Lispは計算というものがどう振る舞うかをモデル化するのに最も適した言語だ。ほんとのことを言って、Lispについて多くのことを知る必要はない。一番シンプルでクリーンなSchemeを使い続…

多読より精読

多読の逆を心がけた一年だった。少ない本をじっくりと読む。そうすることで、かえって知恵は深められたようにおもう。 今年読み上げた本のうち、確かに身になったとおもえるものを列挙する。どれもアカデミズムにおける経歴がたしかな著者/訳者によるもので…

K&R を読み通した

K&R を読みはじめた - ユユユユユ より1ヶ月で、ひとまず通読した。 ANSI C の大きくない仕様を一冊で網羅する、という能書きで始まる。実際、シンタックスの説明は用法を折々に交えながらでも、150ページばかりで終わっている。残りの40ページは標準ライブラリと…

『大学生物学の教科書 1: 細胞生物学』を読んだ

カラー図解 アメリカ版 新・大学生物学の教科書 第1巻 細胞生物学 (ブルーバックス) https://www.amazon.co.jp/dp/4065137438 簡単な化学から始まり、やがて難しい化学になる。それを元手にして、タンパク質、脂質、糖質というみっつの高分子の多様性をみて…

K&R を読みはじめた

The C Programming Language を読み始めた。著者が Kernighan and Ritchie の二人組であることより K&R という愛称で呼ばれるようである。 学生の頃に無料で落ちていた PDF 版を手に入れて冒頭を眺めたことを覚えている。そのころは古典を所有するという以上…

CS:APP を読み終えた

「CS:APP を読みはじめる」という記事を書いてから足掛け3ヶ月にして、読了に漕ぎつけた。案外ペースとしては悪くない。各章末に配された練習問題はスキップする方針で読んだ。平日には長くても1時間、週末には気が向く範囲で数時間といったくらいの時間を割…

CS:APP を読みはじめる

Computer Systems: A Programmer's Perspective の日本語訳、『コンピュータ・システム — プログラマの視点から』を購入した。通称は CS:APP というらしい。 値段、重量、厚みすべてにおいてヘビー級の一冊である。16000円だった。消費税で本が一冊買える。 …

Designing Data-Intensive Applications を読み終わった

昨年末に着手して、足掛け5ヶ月で読了した。 5ヶ月というとあまりに時間がかかりすぎているように聞こえる。実際には年末年始とこの GW で集中的に読んだ。しかも、後者の連休ではメモを取りながら読み進めることをやめて、読み終えることそのものを目標化し…