ユユユユユ

webエンジニアです

『フランシス・ハ』

ノア・バームバック監督の『フランシス・ハ』を観た。 社会にうまく馴染めない、というほどに悲壮感のあるわけではないけれど、空回りをしてはどこかさみしげなフランシス、27歳を描く。 惨めたらしく過ごしても不思議でないはずの人生が、口から生まれてき…

『リゴレット』

新国立劇場に、『リゴレット』をみにいった。初日の公演であった。 筋書きは救いのない悲劇そのものである。 容貌が醜いからほかに仕事もなく道化師をするリゴレットは、一人娘のジルダをたいせつに愛する父の顔ももつ。彼のあるじにしてのちに敵となるマン…

『ブルー・バイユー』

国籍システムの不備が悪意を持って運用されているという主題設定と問題提起に優れたものがある。 養子として合衆国にやってきて、そこで長く暮らしてきた人間が、手続きの不備をもって「見知らぬ母国」に送り返されるという理不尽さは現存する。人種マイノリ…

『エンジェルス・イン・アメリカ』「ペレストロイカ」

新国立劇場に『エンジェルス・イン・アメリカ』の第二部を観にいった。第一部から二日後の、夕方の上演を観た。 プライアーの前に天使が降りてきて第一部が幕切れとなったあとで、しかし登場人物の誰もまだ恩寵を受けてはいない。そこからどうやって「アメリ…

『エンジェルス・イン・アメリカ』「ミレニアム迫る」

新国立劇場に『エンジェルス・イン・アメリカ』の第一部を観にいった。 1985年。レーガン第二期政権のはじまった年に舞台は置かれる。見かけの景気はよさそうでいて、エイズと精神錯乱がプライベートな話題の中心に居座っている。エイズによって終わる関係、…

『スカイウォーカーの夜明け』

スター・ウォーズの第九作をみた。 ふたたびはじまってしまった物語になんとか決着をつけるために長い因縁を総動員して、それでどうにかこうにか話が終わることになる。観客としても、なんとか付き合いきれたという安堵を持っている。 レイの葛藤の根源は彼…

『最後のジェダイ』

スター・ウォーズの第八作をみた。 いくぶん大味なところと、シリーズのエッセンスを凝縮した部分が混在している。非常に出来が悪い部分がいくつもあったように記憶するいっぽうで、忘れがたい達成として印象を残した部分もおおくある。 優れていた部分。ル…

MET ライブビューイング『ローエングリン』

新宿ピカデリーにメトロポリタン歌劇場で録画された『ローエングリン』のビューイングにおとずれた。 演出はフランソワ・ジラール。この演目を観るのははじめてであったけれど、現代的な味付けをしていることははっきりとわかった。舞台は岩で屋根されていて…

『フォースの覚醒』

スター・ウォーズの第七作をみた。 『ジェダイの帰還』の後日譚を描いて、滅んだはずの帝国と反乱軍(反乱とはなにか)の抗争が続いているということ。「前より強力なデス・スター」という三番煎じのアイデア。老人たちのいくぶん辛気臭いダイアローグ。そう…

『ゴールデン・エイティーズ』

ヒューマントラストシネマ渋谷でやっていた、シャンタル・アケルマン映画祭に行って、 1986年のミュージカル映画を観た。 カラフルで実用的な衣装を着た若い(白人の)女性たちが、美容師の仕事道具をぞんぶんに使いながら歌いまくる予告編を観た。底抜けに…

東京・春・音楽祭「ニュルンベルクのマイスタージンガー」

東京・春・音楽祭の目玉公演のひとつとして、ワーグナーの演奏会形式の上演をみてきた。指揮はマレク・ヤノフスキ。 ニュルンベルクの乙女エファと、前日に街をおとずれた騎士との恋の話である。歌合戦の勝者が乙女を妻にするというルールのもとで、はじめは…

『シスの復讐』

スター・ウォーズの第六作を観た。 避けられない結末に向けて次々と悲劇が起こるさまが、古典の趣をたたえていた。これをシリーズ最良の作品とおいてぼくには異論がない。はじめからおわりまですこしも目を離さずに観て、不満を感じさせる部分もなかった。 …

すごいお医者さんの話

夕方に急にお腹が痛くなり、そう気づいた途端に具合も悪いような気がしはじめた。思い当たる要因はいくつかあった。寝不足、水分不足、不規則な食事など。ひとまず水を飲んで寝ていたら回復して、食欲も戻ったのでその日は早く寝た。 未明にふたたび、強い腹…

東京・春・音楽祭「ベンジャミン・ブリテンの世界V」

日曜日に東京・春・音楽祭のベンジャミン・ブリテンを聴きにいった。会場ははじめての東京藝術大学奏楽堂。 「ベンジャミン・ブリテンの世界V」と題されているのは、この音楽祭でブリテンを取り上げる連続シリーズの五回目にあたるからだという。そしてこの…

『クローンの攻撃』

スター・ウォーズの第五作をみた。監督は引き続きジョージ・ルーカス。 これはあまり好みでなかった。終始沈鬱な雰囲気を発しているのは、アナキンに葛藤があるせいだが、彼は善と悪のあいだで揺れるというよりも、いつも悪のほうに振れていてかろうじて周囲…

『ファントム・メナス』

スター・ウォーズの第四作をみた。ジョージ・ルーカスが第一作以来に監督を執っている。 小学生のころに劇場公開された。映画館に連れてもらいはしなかったけれど、テレビ放送を録画したものを繰り返し観た記憶はある。きっと次作の公開時に放送されたのだと…

『ハン・ソロ』

スター・ウォーズのスピンオフ映画を観た。監督はロン・ハワード。 ブロックバスターのノリに波長があってたのしく鑑賞した。あまり期待せずに観始めたのは『ローグ・ワン』の後味もあってのことだったけれど、こちらは打って変わって最後までスクリーンにひ…

東京・春・音楽祭「ミュージアム・コンサート 毛利文香」

東京・春・音楽祭に、毛利文香さんと景山梨乃さんによるバイオリンとハープのデュオを聴きにいった。 ミュージアム・コンサートと題されていて、会場は国立科学博物館の常設展地下二階。哺乳類の化石の展示室で、天井からは大型海洋生物のおおきな化石を吊り…

『ローグ・ワン』

スター・ウォーズのスピンオフ映画を観た。『新たなる希望』の前日譚にあたる。 冒頭に帝国幹部が訪れるというのであわてるある科学者の家族の描写がおかれる。エゴイズムを隠しきれない父、意味もなく死に急ぐ母、押し黙る女児。駆け足気味にクリシェを乱発…

東京・春・音楽祭「シューベルトの室内楽」

上野で催されている東京・春・音楽祭に小さなプログラムを聴きに行った。マーラー編の弦楽四重奏曲「死と乙女」に、最晩年の弦楽五重奏曲のふたつ。 バイオリンが10人、ビオラとチェロが4人ずつ、コントラバスが1人というおおきく贅沢な編成だった。すべての…

『スター・ウォーズ ジェダイの帰還』

スター・ウォーズの第三作を観た。監督は再交代してリチャード・マーカンド。ジョージ・ルーカスが脚本にクレジットされているのは第一作以来になる。 前作までどこか頼りなさが残っていたルーク・スカイウォーカーは、冒頭から英雄の風格を身につけている。…

Towards Transparent CPU Scheduling by Joseph T. Meehean

マルチプロセサのスケジューラを扱った博士論文をオンラインで読んだ。 https://research.cs.wisc.edu/adsl/Publications/meehean-thesis11.pdf OSTEP の第十章の文献リストにあったことに興味を惹かれて、序章を読んだ。全体を読むにはいたっていないが、い…

Multi-Level Feedback Queue

TIL

OSTEP の第8章で Multi-Level Feedback Queue の理念と動作原理について読んだ。 OS のスケジューリング問題へのアプローチとして1962年に考案されたアルゴリズムである。日本語だと「多段フィードバックキュー」が定訳らしいと wikipedia で知った。 ターン…

『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』

スター・ウォーズの第二作を観た。アーヴィン・カーシュナーが監督をしていて、ジョージ・ルーカスは製作にまわっている。 ルーク・スカイウォーカーは相変わらず英雄然としていない。むしろたいした負け犬で、しかもオビ=ワンとヨーダの忠告に逆らって負け…

『スター・ウォーズ 新たなる希望』

ジョージ・ルーカスによる SF サーガの第一作をみた。 子供の頃にテレビ放送を録画して繰り返し観ていたのは『ジェダイの帰還』とたまに『帝国の逆襲』だった。『新たなる希望』は案外みたことがなかったかもしれない。筋書きをよく知っているつもりでいて、…

『フェイブルマンズ』

スティーブン・スピルバーグの新作を劇場に観に行った。脚本にトニー・クシュナーが参加している作品を観たのははじめてになる。 ある映画好きの少年が青年に成長するまでを描いている。これは監督による自伝にあたると宣伝されているのだけれど、観てみたと…

『隠し砦の三悪人』

黒澤明の『隠し砦の三悪人』を観た。1950年代の黒澤作品はこれが最後で、1960年の『悪い奴ほどよく眠る』の前作になる。 これは『スター・ウォーズ』を観る前に、見比べてたのしむことができるよう選んだ。はじめての鑑賞ではないけれど、おもしろく観た。キ…

日本対メキシコ

前の晩の三時近くに寝ようとして、翌朝に WBC の準決勝があると気づいた。見逃しはすまいと、朝八時に目覚まし時計をセットして、春分の日に早起きして観戦した。 メキシコ先発のサンドバル投手は、初球のストライクがおおくてテンポよく、四球をほとんど出…

九段下へ引っ越しの手伝いに

長い友人が九段下から三軒茶屋に引っ越すことになった。年末に付き合いはじめたパートナーと一緒に暮らすことにしたのだという。その手伝いをしにいった。そのパートナーにもはじめましてのあいさつをした。 重いソファを5階から地階に運び出すことだけがき…

佐伯祐三展

東京ステーションギャラリーで佐伯祐三展をみた。待ち時間を使って訪れるまで存じ上げない作家だったが、たいへん満足ゆく展示だった。 20世紀の初頭に東京とパリを行き来して活動した、エゴン・シーレと同じ世代の作家である。若くして肺を病んで、パリで客…