ユユユユユ

webエンジニアです

2022-01-01から1年間の記事一覧

鎌倉殿の13人

今年の大河ドラマはめっぽうおもしろいという話を教えられて、この月から NHK オンデマンドを契約して、駆け足で最新話まで追いついた。ちょうど頼朝が物故したところ。13人というキーワードは次回から大きく取り上げられることとなり、いよいよおもしろく、…

日傘、図書館、台湾料理

猛暑につきランニングを止めているのだが、昼食のあとに散歩する習慣は残している。6月末に猛暑が続いたときに日傘を調達した。暑いことには変わりがなく、焼け石に水とおもいもしながら、それでも日差しを直接受けるよりはずっとマシだと信じて持ち歩いてい…

温又柔『魯肉飯のさえずり』

新しい小説を読むのはずいぶん久しぶりになる。読みだした最初の10ページほどはなかなかこちらのエンジンがかからずにいた。若い主婦がキッチンに立って独白するという、うまく自分にひきつけてもぐりこめない舞台から話がはじまるので、たしょうの戸惑いは…

『ベイビー・ブローカー』

もっとも崇高な瞬間はただ一度だけ訪れる。 それは決定的な破局の直前に訪れる。嵐の前の静けさといってもいいかもしれない。どうしてこんなことに、と浮足立ってもおかしくないときに、かえって運命をいつくしむようにして悠然としている。 灯りを消して、…

解析入門 ('18) 全15回

シラバスの課程を終えた。しかし音声講義の不十分さから、不必要に苦しめられたという嫌な気分は最後まで残っている。自分の能力不足を棚にあげて教師を責めることほど無神経なことはないとわかりつつも、ここに関しては我慢することが難しい。ぼくの水準と…

線形代数学 ('17) 全15回

「入門線形代数 ('19)」の直接の続編講義である。「入門」では、行列演算の基本事項から「固有値を求めて対角化する」というところまでをカバーしていた。今期の講義では、幾何ベクトルから再出発して、各種の変換を学んで、ジョルダンの標準形を求める。ま…

『サッドヴァケイション』

暗闇のなかに二人組が立っている。粗野な格好をして、並んで遠くを眺めている。なにかを待っている。 二人は無言で無骨な鉄ハシゴを降りる。狭い地下室に男たちがすし詰めに横たわっており、眠っていたのだろう、懐中電灯に照らされて不服そうににらみつける…

『奇跡の丘』

パゾリーニによるキリストの生涯の映画化。国内上映権が切れるタイミングで新文芸座が上映するというので、レイトショーで観にいった。 とても嫌な映画だった。詭弁だらけの論破王。ポピュリストの独裁者。そういうフレーズが上映中ずっと頭のなかを走り回っ…

『アポロンの地獄』

散文的に幕を開ける。とりとめがなく、文字通り焦点の定まらないショットが続き、前半部分は眠気を引き出されていた。しかしオイディプスが即位し、テーバイを災厄が襲いはじめてからというものは、否応なく目を見開かされる、感覚に痛々しいシークエンスが…

解析、床屋、お好み焼き

快晴。早朝から一気に気温が上がり、暑すぎて嫌でも目が覚める。最高気温が37℃だという。梅雨はどこへいったのか。冷房を効かせた部屋で、昼休みをはさみながら、解析の勉強。 南中からしばらく待って、サンダルを突っかけて自転車で出かける。駅前でタイヤ…

ラジオ講義への不満

解析入門の講義は第14講のローラン級数にはいろうというところ。ラジオ講義の解説は数式を口頭で読み上げるという前近代的な仕上がりになっている。コーシーの積分定理の証明の途中式をだらだらと詠唱しているさまを想像してほしい。不便を超えて悪質の域に…

データベース('17): 全15回

放送大学の「データベース('17)」の講義を完走した。週に一課を一定のペースで進めるのではなく、気が向いた時間に数回分の講義をまとめて視聴するやり方で通した データベースという言葉の語源が、50年代に米軍が持っていた情報集約基地のことをズバリ指し…

『私だけ聴こえる』

疎外感を感じるのは誰にでもあること。自分ではどうしようもない、神が与えた境遇に苦しむのは普遍的なこと。悩みや不満を共有できる相手がいることはたぶん、心からわかりあうこととはすこし違う。その宙吊りなアイデンティティを、コーダという名前で定義…

『マイスモールランド』

大学3年のとき、『ペルシア語文法ハンドブック』という文法書を、その著者の吉枝先生の研究室で買わせてもらった。それをカナダ留学に持参して、在カナダのイラン系移民の子どもたち(彼らは親の言葉を話せないのだった)と一緒に、ペルシア語の授業を受けて…

『トップガン マーヴェリック』

映画はフィクションだというのは大前提であるのに、それでも「そんなご都合主義なことがあるかねえ...」と醒めた態度でもって、リアリティがなくていまいちピンとこないんだよねえ、と気の抜けた感想を持ってしまうことはしばしばある。つまらない大人の仕草…

So long!

恩着せがましいといわれた。そうなんだろうな。 自分に酔っているのだといわれたら、たぶんそうなのだろう。そうなのだろうから仕方がない。どうしようもない。ひとのためになにかをする。それを互いに幸福におもえる。そういう幻想を楽しめなくなったら、お…

坂口恭平の『よみぐすり』

ツイッターで発された「いい言葉」の抜粋を相田みつをの名言集よろしくパッケージしたような本、という印象が最初にあった。元気の出ることは書いてありそうだけど、1ページに140文字くらいという濃度の本で、しかも同じものをネットで無料で読めるんでしょ…

真面目は美徳か悪徳か

不真面目より真面目のほうが優れているかのような錯覚にとらわれてはならない。不真面目が多様な相を持っていることに比べて、真面目ということの凡庸さはおおいなる不自由を生じさせる。 真面目という言葉は雑である。「なんとなくいいこと」くらいの意味で…

楽しいパーティーとバッドな現実

2018-19年に恵比寿のシェアハウスに住んでいた。そのときに仲良くしていたメンバーとの飲み会にいった。19時に飲み始めて、3時過ぎにタクシーで帰った。悪い飲み方をしたつもりはなかったはずなのだが、ひさしぶりにひどい二日酔いに見舞われた。8時間も飲み…

『シン・ウルトラマン』

怪獣との戦闘はおもしろい。それがバカにもわかるウルトラマンの力と勇気を見つけているからである。しかしそれ以外のパートでは、特殊な固有名詞とそれらしい政治劇で煙に巻くような構成が悪くみえた。 中身のない話をし続けるという意味ではたしかに空想映…

曲線 C: |z-1| = 1

この が となる。そのように説明されるのを線積分の講義で聴いて、行間の論理が吹き飛ばされて大きく飛躍したのを感じて、混乱した。 wolframalpha.com でプロットしても、思ったとおりV字のグラフが描かれて、助けにならなかった。 そのとき、この YouTube …

基底の基本変換

基底の基本変換のレッスンが「線形代数学」の第七課であった。そこでは簡単になぞって終えていた。それがいま第十課にやってきて、任意の行列の基底を変換して上三角行列に変形するやり方を教えられて、基底の基本変換の計算にちょっと怪しさをおぼえた。復…

R.I.P. iPhone X

先週の火曜日、長く使い続けてきた iPhone X がいよいよ壊れた。スクリーンの一部が映らなくなり、画面のオンオフごとにブラウン管テレビさながらにフラッシュするようになった。 もう何年使ったかも数えていなかった。ベゼルレスの新しいデザインが投入され…

『コーダ あいのうた』

昨日は早起きをしたおかげで早寝をすることもでき、おのずときょうも早くに目が覚めることになった。手持ち無沙汰に就業してしまい、予定もないのにはや上がりになりかねなかったところ、なんとなく映画館を物色していて、いい時間の上映を見つけた。アップ…

『グリード (1924)』

8時に始業、17時に終業して映画を観に行った。アテネ・フランセに。 早起きに慣れないので、向かう電車で眠気をもよおした。そのコンディションでサイレント映画をみる。これは眠ってしまうかもな。 しかしそれは杞憂だった。おもしろい! ただならないオー…

『EUREKA/ユリイカ』

もうだめだ! とおもったところから、再起をはかって車を走らせる。その後半の構造は『ドライブ・マイ・カー』とたしかに似ている。しかし似ているところを探すために観ていたのではない。後半だけが見どころだというのでもない。全編通して強力な作品で、4…

Naruyoshi Kikuchi Quartet

渋谷のセルリアンタワーに、菊地成孔の生演奏を聴きに行った。DCPRGの解散公演を聞きにいって以来で、ビッグバンドからコンボへ、エレクトリックからアコースティックへ、スタジオコーストからジャズクラブへ、と形式としてはかなりソリッドな催しになる。ギ…

すこし悲惨な中間テスト

大学の中間テストの期間にあたっている。全15回の講義のうち、第7講あたりまでが試験範囲になっている。講義の聴講は大型連休でよく進められていて、この範囲の学習は余裕をもって終えられていた。 問題冊子は学期初めに郵送で送られてきていて、それを郵送…

丸山圭三郎『ソシュールを読む』

1-8章では『一般言語学講義』の概要を解説する講義が語られて、9-10章で丸山先生のソシュールに依拠した文化論が語られる。 https://www.amazon.co.jp/dp/4062921200 チョムスキーは知っているけど、ソシュールは大学の講義で聞き知っているくらいで、ちゃん…

タルコフスキー生誕90年

渋谷のユーロスペースで記念上映をやっており、土日を使って『ソラリス』『ストーカー』『鏡』と70年代制作の三本をまとめて鑑賞した。 『ストーカー』がとりわけよかった。お気に入りの一本になった。超自然的な力の存在はただ示唆されるだけであるのに、そ…