UNHCR aka 国連難民高等弁務官事務所
平日のお昼に UNHCR のファンドレイザーを名乗る人物が訪れてきた。寄付を募っているらしい。
明確な大義をもった国際機関として、高校生のころには憧れをもっていた。大学生のころに青山で緒方貞子さんの講演を聞いて感銘を受けたこともあった。そんな大きな組織が、戸別訪問をして資金を募るなんて、そんなことがあるだろうか? 巧妙にターゲティングされた詐欺の手口ではないだろうか? そうおもった。
聞くと、小口の寄付を集めている様子だった。資料には月額3千円から1万円の支援のお願いが述べられていた。決してこちらをひるませるような金額ではない。
幼い難民がそれを食べて命をつなぐという栄養食のサンプルも見せてもらった。一食分を製造し配布するのにおよそ50円のコストがかかるということだった。つまるところ、その栄養食を危機のただなかにあるひとびとに届けることがミッションであるので、広報や広告のたぐいに大きいコストをかけるかわりに、戸別訪問という草の根の活動によって啓蒙をおこなっているということだった。
寄付はしたいとおもった。税控除も効くわけで、やがてはやろうとおもいつつ後回しにしていた。きょうたまたまその機会がおとずれたのも、ときのめぐり合わせなのだろうとおもった。
ほんとうであれば話を聞き、資料をもらったうえで公式ページからオンラインで支払うようにする。間違っても見ず知らずの他人に支払情報をわたそうとはおもわない。しかし、戸別訪問によるコンバージョン数(というあけすけなタームは使わなかったけど)が記録できることが、この啓蒙活動の継続に関わるとも聞いて、心が揺れた。
japanforunhcr.org というポータルがあり、そこには戸別訪問を実施しているという声明と、それに関する問い合わせを受け付ける電話番号もあった。そこに電話をかけて、担当者の在籍確認までした。それであっても、よく準備されたスキームなのではないかという疑いがゼロになるわけではない。
いきなり訪れた未知の人物が持つタブレットに個人情報を入力して、あげく決済情報も渡すということ。まあ、まともな判断とはいいがたい。しかし目の前に提示された大義にはひどく共感もしている。どうしたものか?
教えてもらった活動内容を踏まえて、「これがすべて嘘ならこんどはちゃんと寄付し直そう」と妙な開き直りかたをして、情報を渡した。原理と原則のうえでは妥協となるが、共感と信念によって決断した。ボロボロになるまで使い込まれたラミネート資料と、そこに載せられた緒方貞子さんの肖像に免じて、嘘を疑うことを止めて信頼を託してみることにした。あまりない心の動きだったとおもう。
ということがあって、国際機関の支援者になった。