思い出された万年筆
日記を長く書くときにボールペンでグリグリ書き込むのは手が疲れる。紙の上にペン先をおいただけで文字が流れていってくれるといいなとおもった。
学生の頃にプレセントされた真鍮の万年筆があったはずとおもって探したら、昔のトラベラーズノートのポケットに挟まっていた。3年以上ほったらかしにしていたので、手脂で酸化して鈍く汚れてしまっていた。ボディは酢に浸して金色を回復させて(すっかりピカピカにはならなかった)、ペン先は水洗いして固着したインクを取り除いた。
乾くのを待つあいだ、挟んでいた側のノートを読んだ。ドイツに発つ前、そのころの友達と、鎌倉、足利、ディズニーランド、沖縄を訪れたときのメモや切り抜きが留められてあった。そしてドイツについてからの日記、ホロコースト慰霊碑からの抜粋、美術館での覚書がしたためられていた。その先は白紙になっていた。このノートがあることを忘れてしまっていたらしい。万年筆もそれと一緒に忘れられていた。
新しく注文し直したインクカートリッジを差し込んで、もういちど書けるようにした。