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N響定演: ブロムシュテット指揮のマーラー第九

先週のオーチャードホールに続いてN響のプログラムを聴きにでかけた。NHKホールを訪問するのは初めて。マーラーの大作を聴ける機会ということで楽しみに向かった。

ブロムシュテットという名前は、いつかみたドキュメンタリー番組で記憶していた。東独時代のシュターツカペレ・ドレスデンを復興させたという話だった。

会場の熱気は、歴史上の人物を迎えるのにふさわしい温度で、誰にとっても大切なプログラムである様子だった。ブロムシュテットコンサートマスターに付き添われて、ほとんど身体をあずけるようによろよろと歩きながら現れて、全楽章を椅子に座ったまま指揮した。いま年齢を調べてみると、95歳になるのだという。芸術家というよりも仙人のような境地にあるのではないか。

一幕のみ、休憩なしのプログラムだったが、弛緩することはなかった。録音で聞くには集中力がもたないこともある大作をタフに聴かせてくれた。静かにはじまって、消え入るように終わった。場内配布のリーフレットでは「死の主題」というビッグワードに言及していたが、陰惨な死ではなかった。むしろ穏やかに訪れる最期を静かに迎える、達観の様相をもっていた。ベートーヴェンの第九と並び立つ交響曲を、マーラー智慧と内省によって作りきったのだ、という静かな感動があった。

たぶんこのさきの人生で何回も再発見することのできる作品なのだろうとおもう。それを最初に聴いたのが、このオーケストラであることがなんとも嬉しい。忘れられないコンサートになるだろうとおもう。少なくともきょうはそうおもっている。

出かける前にチケット購入時のメールを確認したら、「期日までにチケット代を支払ってください」という文面のものがあって、あわてた。予約をしただけで支払えていなかったのであれば、予約は消滅しているはずだから聴きにいけないじゃないかと。がっかりしていちど家に帰って、もういちど確認したら、同じ時刻にもうひとつのメールが来ていて、それが支払い完了のメールだった。クレジット払いだろうと構わずに支払いを促すメールが必ず届くらしい。あやうく行きそびれるところだった。そうならなくて本当によかった。