ユユユユユ

webエンジニアです

『ローグ・ワン』

スター・ウォーズのスピンオフ映画を観た。『新たなる希望』の前日譚にあたる。 冒頭に帝国幹部が訪れるというのであわてるある科学者の家族の描写がおかれる。エゴイズムを隠しきれない父、意味もなく死に急ぐ母、押し黙る女児。駆け足気味にクリシェを乱発…

東京・春・音楽祭「シューベルトの室内楽」

上野で催されている東京・春・音楽祭に小さなプログラムを聴きに行った。マーラー編の弦楽四重奏曲「死と乙女」に、最晩年の弦楽五重奏曲のふたつ。 バイオリンが10人、ビオラとチェロが4人ずつ、コントラバスが1人というおおきく贅沢な編成だった。すべての…

『スター・ウォーズ ジェダイの帰還』

スター・ウォーズの第三作を観た。監督は再交代してリチャード・マーカンド。ジョージ・ルーカスが脚本にクレジットされているのは第一作以来になる。 前作までどこか頼りなさが残っていたルーク・スカイウォーカーは、冒頭から英雄の風格を身につけている。…

Towards Transparent CPU Scheduling by Joseph T. Meehean

マルチプロセサのスケジューラを扱った博士論文をオンラインで読んだ。 https://research.cs.wisc.edu/adsl/Publications/meehean-thesis11.pdf OSTEP の第十章の文献リストにあったことに興味を惹かれて、序章を読んだ。全体を読むにはいたっていないが、い…

Multi-Level Feedback Queue

TIL

OSTEP の第8章で Multi-Level Feedback Queue の理念と動作原理について読んだ。 OS のスケジューリング問題へのアプローチとして1962年に考案されたアルゴリズムである。日本語だと「多段フィードバックキュー」が定訳らしいと wikipedia で知った。 ターン…

『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』

スター・ウォーズの第二作を観た。アーヴィン・カーシュナーが監督をしていて、ジョージ・ルーカスは製作にまわっている。 ルーク・スカイウォーカーは相変わらず英雄然としていない。むしろたいした負け犬で、しかもオビ=ワンとヨーダの忠告に逆らって負け…

『スター・ウォーズ 新たなる希望』

ジョージ・ルーカスによる SF サーガの第一作をみた。 子供の頃にテレビ放送を録画して繰り返し観ていたのは『ジェダイの帰還』とたまに『帝国の逆襲』だった。『新たなる希望』は案外みたことがなかったかもしれない。筋書きをよく知っているつもりでいて、…

『フェイブルマンズ』

スティーブン・スピルバーグの新作を劇場に観に行った。脚本にトニー・クシュナーが参加している作品を観たのははじめてになる。 ある映画好きの少年が青年に成長するまでを描いている。これは監督による自伝にあたると宣伝されているのだけれど、観てみたと…

『隠し砦の三悪人』

黒澤明の『隠し砦の三悪人』を観た。1950年代の黒澤作品はこれが最後で、1960年の『悪い奴ほどよく眠る』の前作になる。 これは『スター・ウォーズ』を観る前に、見比べてたのしむことができるよう選んだ。はじめての鑑賞ではないけれど、おもしろく観た。キ…

日本対メキシコ

前の晩の三時近くに寝ようとして、翌朝に WBC の準決勝があると気づいた。見逃しはすまいと、朝八時に目覚まし時計をセットして、春分の日に早起きして観戦した。 メキシコ先発のサンドバル投手は、初球のストライクがおおくてテンポよく、四球をほとんど出…

九段下へ引っ越しの手伝いに

長い友人が九段下から三軒茶屋に引っ越すことになった。年末に付き合いはじめたパートナーと一緒に暮らすことにしたのだという。その手伝いをしにいった。そのパートナーにもはじめましてのあいさつをした。 重いソファを5階から地階に運び出すことだけがき…

佐伯祐三展

東京ステーションギャラリーで佐伯祐三展をみた。待ち時間を使って訪れるまで存じ上げない作家だったが、たいへん満足ゆく展示だった。 20世紀の初頭に東京とパリを行き来して活動した、エゴン・シーレと同じ世代の作家である。若くして肺を病んで、パリで客…

有明アリーナでスティングのライブを観た

3月11日、母に誘われてスティングの日本ツアーの公演を観に行った。 昼過ぎに丸の内の広場で落ち合った。グランスタの軽食店でスパゲティを食べた。東京ステーションギャラリーで佐伯祐三の展示をみたあと、有楽町からバスに乗って有明に向かった。会場は東…

箸作りのワークショップにいった

日曜日のレジャーに、パートナーと都立大学駅ちかくの工房に箸作り体験をしにいった。 直方体の木材からかんなで箸を削り出して、やすりをかけて、亜麻仁油を装わせて完成させた。木目の方向を意識しながらかんながけをする工程は、素材の個性が試行錯誤を要…

『スターシップ・トゥルーパーズ』

ポール・バーホーベンの SF 娯楽映画をみた。 ファシスト政治が巨大な虫の形態をもった地球外生命体を生存圏確保のために駆逐しようとする。市民権は軍役と不可分になって、民主主義は滅んでいる。そういう世界のなかに、アメリカ合衆国のハイスクール文化と…

『白痴』

黒澤明によるドストエフスキーの映画化作品を観た。舞台をロシアから札幌に移して、ふたりの男とふたりの女の複雑な関係を提示している。 たくましい男性像とかよわい男性像の対比がいっぽうにあって、他方で女たちは気が強くなよなよしていない。しかし傲慢…

『ビリー・ホリデイ物語』

日曜日の午前中に、東銀座の東劇をはじめておとずれて、ビリー・ホリデイの最晩年のステージを舞台化した作品を観た。オードラ・マクドナルドが歴史的な演技によって称賛を浴びたという広告が、映画館の古い建物のビルボードに堂々と掲示されていて、おもわ…

『脚本家 黒澤明』

国立映画アーカイブの特別展の展示物を、国書刊行会が書籍化して出版していることを知った。新宿の紀伊国屋でのブックフェアで見つけて、ただちに買って持ち帰りその日のうちに読んだ。 助監督業のかたわら禁欲的に脚本の執筆にいそしんだ若い時代にはじまっ…

大江健三郎さん

大江健三郎さんがなくなられたという報道をみた。 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230313/k10014006861000.html 実はすでにいないひとになっていて、ただ発表がされていないだけであるような気が、この数年間あった。エドワード・サイードさんがそうし…

長崎旅行

3月3日から5日まで長崎市にいた。目的は気晴らし。 市内から山を越えた茂木というちいさな港町の、月と海という宿に泊った。海のみえるおおきな窓が東向きに備わっていて、朝にはまぶしいばかりの爽やかさが、夜には黒々しい雄大さがあった。全日好天であっ…

『ベネデッタ』

ポール・バーホーベンの新作を新宿武蔵野館に観に行った。 秘蹟が事実であるか虚言かで揺れるドラマであるが、超越的な奇蹟は存在するはずがないという立場から眺めるに脆弱さもある。この修道女は実在したと冒頭と末尾でしつこく言及するのはいくぶん蛇足で…

CPU の仮想化、カーネルモード、トラップ

TIL

ウィスコンシン大学が公開している Operating System: Three Easy Pieces の第六章で、プロセスという抽象化がどのようにして CPU を効率的に使おうとするかの描写を読んだ。 https://pages.cs.wisc.edu/~remzi/OSTEP/cpu-mechanisms.pdf 断片的に知っていた…

システムコールのコスト

TIL

ウィスコンシン大学が公開している Operating System: Three Easy Pieces の第六章 "Direct Execution" より、システムコールのコストを計測する課題を書いた。 テクストはこれ。末尾に課題の説明がある: https://pages.cs.wisc.edu/~remzi/OSTEP/cpu-mechan…

東京都美術館のエゴン・シーレ展

東京都美術館のエゴン・シーレ展をおとずれた。 クリムト、コロマン・モーザー、リヒャルト・ゲルストル、オスカー・ココシュカというぐあいに分離派の面々の作品をあつめて、シーレ展と呼ぶには誇大広告に感じた。冒頭に展示されていたクリムトのふたつの小…

『M★A★S★H』

奇異な題名は高校生のころから知っていたけれど、観る機会がないままになっていた独特な映画『M★A★S★H』をみた。 おおきな筋がある代わりに舞台のお膳立てだけがあって、そのうえで即興的に大小の逸話が書かれていく。その構造に気づくまでは、いまいちとら…

新国立劇場で『ファルスタッフ』を観た

新国立劇場でヴェルディの『ファルスタッフ』の上演を観た。イタリア・オペラを観るのも、喜劇オペラをみるのもはじめてで新鮮におもった。 初演は1893年。ヴェルディはワーグナーと同年の生まれで、ワーグナーの死から10年後にこれを世に出した。晩年のスタ…

新国立劇場で『タンホイザー』を観た

新国立劇場にタンホイザーの上演をみにいった。今シーズンのプログラムでは唯一のワーグナー作品である。 完璧な舞台であった。これまでに観たどの演劇よりも優れた体験を与えられたと無邪気に信じてなんの迷いももたない。オーケストラが序曲を演奏しはじめ…

『カッコーの巣の上で』

人間の自由を疑ってしまいかねない気分のときにうってつけの映画を観た。 怠惰で粗暴であることは悪であるのか? 手に入れたいものを求めることは傲慢であるのか? 判決をくだして断罪しようとする者もまた、不完全な人間であるというのに。 刑務作業はした…

内視鏡検査を受けた

有給休暇をとって内視鏡検査を受けた。直腸部分に炎症がみつかって、細胞が検査機関に送られることになった。その結果を聞くのは半月後になる。 去年の秋の京都出張のおり、ホテルのトイレで下血した。痛みをともなったというわけでもなくて、ただ便器が赤く…

『ペルシャン・レッスン 戦場の教室』

Bunkamura ル・シネマに強制収容所と偽語学を題材にした映画をみにいった。 焦点の定まらないストーリーテリングだった。主人公のユダヤ人の葛藤には踏み込まないいっぽうで、収容所につめかけるナチスに対しては、かれらの小市民的な悩みに不適切によりそう…